おがくずから生まれる、小浜の色

おがくずから生まれる、小浜の色

染色作家、諏訪裕美さん
色との出会いと、まだ見ぬ色のこと


箸をつくる過程で、必ず出るたくさんのおがくず。

1日に50kg。年間にすると、12tにもなります。毎日の作業のなかで、それらを掃き集めることも、箸をつくる上での日常風景です。

そんなおがくずを、このたび染色作家の諏訪裕美さんが、素敵な色に変えてくださいました。

本来なら、捨てられていくはずだったもの。
それが布を染め、衣服になる。
自分たちの手元から出たものが、まったく違う姿になって、もう一度かえってくる。

見慣れていたはずのおがくずに、こんなにも豊かな色が隠れていたなんて。

マツ勘は、100年以上という長い年月のなかで、小浜で箸をつくり続けてきました。
その営みから生まれた色を、諏訪さんは「小浜という土地の記憶の色」と呼んでくださいました。

おがくずから生まれる色には、どんな色があるのでしょうか。
そして、植物や土地から生まれる「色」に諏訪さんはなぜ惹かれるのか。

今回の記事では、「色」の話を入り口に、ものづくりへの想いを伺ってみました。

「桜色は、花びらの色じゃない」



諏訪さんが染めに興味を持つきっかけになったのは、子どもの頃に読んだ本の一節でした。

そこに書かれていたのは、桜色についての話。

桜の花びらを染料にするのではなく、花が咲く直前、枝に蓄えられた色素が桜色を生み出しているというのです。

「桜の木のなかにあるエネルギーみたいなものが、色になっているんだと思って。そこがすごく面白かったんです」

もともと山の近くで育ち、植物が好きだったお母さまの影響で生け花を習っていた諏訪さん。祖父母が営んでいた機屋には端切れがたくさんあり、家にはミシンもありました。

幼い頃から人形の服をつくるなど、ものをつくることは身近なものでした。

その後、その延長で服飾専門学校へ進んだ諏訪さん。夏休みの課題で染めの工房を訪れたことをきっかけに、自分でも染めるようになります。卒業後は天然染料を扱う染工場へ。そこで約9年間、デザイナーから指定された色を、布の種類や条件に合わせて再現する仕事に携わりました。

けれども仕事を続けるうちに、少しずつ別のことが気になり始めたといいます。

「染料として届く植物は、乾燥して刻まれた状態なんですよね。それを見ているうちに、この植物はどんな花が咲くんだろう、どこで育ったんだろうって、植物そのもののことが知りたくなって」

そこから諏訪さんの染めは、少しずつ変わっていきました。

「この色をつくりたい」から、「どんな色に出会えるんだろう」へ


以前は、決められた色に近づけることが仕事だった諏訪さん。

けれど今は「この色をつくりたい」というところから始めるのではなく、「この植物から、どんな色に出会えるんだろう」というところから染めが始まります。

自分で植物を採るところから染めてみたいと染工場の仕事を辞め、さまざまな土地を訪れながら制作を続けてきました。

同じ植物でも、育った場所や状態、染め方によって、現れる色は少しずつ違います。

だからこそ思い通りにならないことも含めて、予想していなかった色に出会う瞬間が面白い。

今回のおがくず染めも、そんな「出会い」のひとつでした。

箸をつくるおがくずから、どんな色が生まれるのか


今回使用したのは、箸の製造過程で生まれたパープルハートと桜のおがくず。

約25kgを使い、2mの正方形にカットした布を36枚ほど染めました。

おがくずを染料に使うのは、諏訪さんにとっても初めての試み。

実際にやってみると、おがくずが想像以上に染液を吸い込んでしまい、染液が足りなくなったり、濾したり絞ったりする作業が大変だったりで、思い通りにいかないことも…

それでも、そこには植物染めとはまた違う面白さがありました。

特に初めて扱ったパープルハートからは、予想していなかった赤や青の色素が現れました。

「染液を見ているときも、布を最初に浸したときも、色が出てくる瞬間ってすごくきれいなんです。濡れた布を風に揺らしているときにも、また違う色が見える。その瞬間にしか見られない色があるんですよね」

染め上がった布だけではなく、そこへ至るまでの一瞬一瞬にも、諏訪さんはたくさんの色を見つけています。

「何色」と決めないこと


今回生まれた色には、あえて決まった色名をつけていません。

同じ黒でも、赤みを感じる人もいれば、黄色みを感じる人もいる。光の具合でも、見え方はその時々で変わります。

だから諏訪さんは、色を名前で固定するのではなく、使った植物や媒染の方法を記して展示をしています。

「色って見る人によっても違うと思うんです。だから、これはこの色ですって決めてしまうより、見た人がそれぞれで感じてもらえたらいいなと思って」

今回の染め布の展示会場となるGOSHOENの蔵の2階も、朝から夕方にかけて光の入り方が違うので、その時間、その場所でしか出会えない色があるかもしれません。

未来へとつながる色


今回生まれた色は、単に「木から染めた色」ではなく、「小浜で続いてきた箸づくりから生まれた色」なのだと思います。


諏訪さんは、そうした背景ごと受けとめて、この色に「小浜ならではの色」を見出してくださいました。

毎日当たり前のように掃き集めていたおがくず。
見慣れた風景のなかに、まだ知らない色が眠っていたなんて。

このプロジェクトを通して、小浜という土地に積み重なってきた時間を、いつもとは少し違う角度から見つめ直すことができました。

これらの色はきっと、これまでの時間を映しながら、これからの小浜へとつながっていく…その先にどんな景色が広がるのか、今からとてもわくわくしています。

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photo: 堀越 一孝
text: 梁 翠芳


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I展示会のお知らせ

おがくずで染めた布から生まれたお洋服を、諏訪裕美さんの個展で展示いたします。

会場は、GOSHOENの蔵の2階です。
朝と夕方では光の入り方が変わるので、同じ一着でも、訪れる時間によって違う色に見えるかもしれません。

展示しているお洋服は、その場でお買い求めいただけます。
オーダーメイドも承っていますので、気になる一着があれば、ぜひ会場でご相談ください。

suwayuumi solo exhibition
会期|10月16日(金)〜25日(日)
   ※10月21日(水)・22日(木)は休園日
会場|GOSHOEN みんなのスペース(蔵2階)
   福井県小浜市北塩屋17-4-1
時間|10:00〜17:00

会期中には、おがくずで実際に染めを体験できるワークショップも開催します。

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I産地の色で染めるワークショップ


お箸をつくる工程では、木を削るたびに、たくさんの「おがくず」が生まれます。
これまでは役目を終えていたこのおがくずで、布を染めてみませんか。

今回使うのは、桜のおがくず。
染めるのは、手織りのシルクでできたスカーフです(約50cm四方)。

草木染めは、その日の気温や水、木の状態によって色の出方が変わります。
同じ材料でも、一枚として同じ色にはなりません。
仕上がりの色は、当日のお楽しみに。
(色の方向としては、やわらかなベージュからゴールドにかけての色合いを予定しています。写真はイメージです。)

当日使った染めのレシピはお持ち帰りいただけるので、ご自宅でも楽しんでいただけます。

はじめましての方も大歓迎です。
ご参加お待ちしております。

日時|10月17日(土)10時〜13時半ごろ
定員|10名(要予約)
会場|GOSHOEN 
   福井県小浜市北塩屋17-4-1
参加費|¥9,500(税込)
   ene COFFEE STANDのドリンク&スイーツチケット付
染めるもの|手織りシルクスカーフ(約50cm×50cm)
染め材|桜のおがくず
お持ち帰り|染め上げたスカーフ、染めのレシピ
ご予約方法|こちらのフォームよりお申し込みください

ご予約リンクは、GOSHOEN Instagramのストーリーハイライト「イベント情報」からもご確認いただけます。

※終了時間は作業の進行によって前後する場合があります。
※野外での作業です。天候により内容が変更になる場合があります。
※雨天中止。中止の場合は後日、染め上げたスカーフをお送りすることも可能です。
※汚れてもよい服装でお越しください。